自作の楽曲をギター弾き語りで歌うスタイルの歌を、ロシアでは「アフトルスカヤ・ぺースニャ」と言います。意味は「ソングライターズ・ソング」。日本で言うところの「シンガーソングライター」のジャンルです。これをロシアで最初に確立したのがオクジャワでした。彼に続く存在が、以前にご紹介したウラジーミル・ヴィソツキーです。
彼は元々詩人ですが、友人から習ったギターを弾いて1950年代後半から自作の詩にメロディーをつけて歌うようになりました。
そして同時期に米国でも「詩の朗読」が若者たちの心をとらえ流行していた。所謂「ビートの詩人」たちの時代です。そこで歌も歌っていたのが、ボブ・ディラン。ディランと交流があったのが、ムーブメントの旗手、詩人アレン・ギンズバーグでした。
「なるほど、米国のムーブメントがロシアにも波及したという訳か」
と、思いますよね。ちょっと待った。
「詩の朗読」の文化は、ロシアのほうが古いです。ド田舎の酒宴の席でも突然にオッサンが立ち上がって詩の朗読を始めたりします。今の若い世代はそのようなことはないでしょうが、昔はそうでした。そして、上に挙げたギンズバーグの両親はロシアからの移民、ディランの祖父母はオデッサからの移民です。つまり、「詩の朗読」という表現方法は、ロシアから米国に伝わった部分があるのではないかという仮説を、個人的には持っています。
下は、ブラート・オクジャワの代表作の一つ、「紙の兵隊」です。どことなく、現在の状況を連想させます。
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「神の兵隊」 ブラート・オクジャワ
この世に一人の兵士がいた
美男で勇敢な
でも彼は子供のおもちゃだった
だって、紙の兵隊だったから
彼は世直しをしたかった
みなが幸せになれるように
でも糸にぶら下がっていた
だって、紙の兵隊だったから
火の中にも煙の中にも喜んで行く
あなたのためなら二度も死ぬ
でもあなたは彼をからかった
だって、紙の兵隊だったから
あなたは彼を信頼しなかった
自分の大事な秘密を明かさなかった
なぜ?なぜなら
紙の兵隊だったから
彼は自分の運命を呪っていた
静かな人生を望まなかった
「火をくれ、火を!」と頼み続けた
自分が紙だと忘れていた
火の中へ?じゃあ行こう!行くのかい?
そしてある日足を踏み入れた
そこで彼は塵々に焼かれたのさ
だって、紙の兵隊だったから
"Бумажный солдатик" Булат Окуджава
Один солдат на свете жил,
красивый и отважный,
но он игрушкой детской был,
ведь был солдат бумажный.
Он переделать мир хотел,
чтоб был счастливым каждый,
а сам на ниточке висел:
ведь был солдат бумажный
Он был бы рад в огонь и в дым
за вас погибнуть дважды,
но потешались вы над ним,
ведь был солдат бумажный.
Не доверяли вы ему
своих секретов важных,
а почему? А потому,
что был солдат бумажный.
А он, судьбу свою кляня,
не тихой жизни жаждал,
и всё просил: "Огня! Огня!"
Забыв, что он бумажный.
В огонь? Ну что ж, иди! Идёшь?
И он шагнул однажды,
и там сгорел он ни за грош:
ведь был солдат бумажный.