先週、このシリーズで、ヴァルヴァラの話をしました。カチューシャの歌唱でロシアの国民的歌手という印象ではあるものの、キャリアを歩み始めた当初、彼女自身は強く世界を意識し目指していた。と、いうことは・・・

そのまったく同じ時期に、世界を席巻したロシアの女性ボーカルグループがありました。そう、t.A.T.u.(タトゥー)です。ヴァルヴァラはその成功を目の当たりにし、欧米のポップスに挑む以上に、ロシア発の大波と戦わなければならなかったはずです。何をやってもタトゥーと比較され「イマイチ物足りない」と思われてしまうので。巨大な渦の中で、彼女が自分自身のアイデンティティを求めたものが、逆にロシアの民族的なものではなかったか。個人的にはそのように想像しています。

さてそのタトゥーですが、ボーカルの女性二人だけを呼ぶときには「タトゥーシキ」と呼ぶのが正しく、「タトゥー」は彼女らを含むプロジェクトチーム全体を指すとのこと。そしてチームを指揮していたのが、あのお騒がせプロデューサー、イワン・シャポワロフ。元々は小児精神科医で、その後ミュージックビデオの制作を行っていました。従って、音と映像で人間の脳に強い刺激を与えることに関しては優れていたのでしょう。タトゥーをスターダムにのし上げた「私はおかしくなった」のミュージックビデオも、彼が監督しています。日本で信用を失ったM-ステ事件は残念でしたが、その件についてはまた別の投稿で書きます。

女性二人は、リェ―ナ・カーチナとユーリャ・ボルコワ。次第に迷走するようになったシャポワロフを2004年に解任し、その後数年は安定した活動。2009年からはそれぞれのソロ活動がメインとなり、解散を再結成を繰り返しています。現在でも二人でステージに立つことがあり、2022年にはミンスクのディナモスタジアムでカムバック パフォーマンスを行いました。末尾に二人のインスタグラムのリンクを貼っておきます。

ところで、二人は実際にはレズビアンではなく、その設定はシャポワロフの仕掛けだった訳ですが・・・
昨今の政治言論界の視点からは、「ロシアの伝統的家族の価値観を崩すためのDSによる仕掛けだったのではないか?」と思いますよね。どうなんだろう? 個人的には、素の彼女たちからはそのような気配は漂ってきません。普通の気さくなロシア女性のように見えます。ただ、そのように利用された部分はあるかもしれません。

下に、最初の爆発的ヒット曲「私はおかしくなった」PVを埋め込みます。サビを口ずさんでみたい方は、「ヤ―サシュラスマ」を2回、「ムニェヌジナアナ」を2回。早口言葉の呪文のようにして、ぜひチャレンジしてみてください。

(ぜひ他の楽曲もお楽しみください。旧ソ連音楽関係の記事はこちらをクリック。)



「私はおかしくなった」

おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要
おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要

私はおかしくなった!

すっかりダメになった、すべてまったく
状況「HELP」、状況「S.O.S.」
自分でもわからない、あなたはどこから来たの?
なぜ、なぜ、あなたに恋をしたのかしら?

明かりが消えて 私はどこかへ飛んでいく
あなたなしでは私はない、何も欲しくない
遅効性の毒 気を狂わせる
人々は言う「オマエは罪人」
人々は言う「オマエは罪人」

おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要
おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要

私はおかしくなった!私には彼女が必要!

あなたなしじゃ私は私じゃない あなたなしじゃ私じゃない
人は言う、ナンセンスだと人は言う
太陽の毒、黄金の光線
人々は言う「緊急の治療が必要」

忘れたかった 心の底まで
柱を数え 乱れ飛ぶ鳥を数えた
あなたなしの、私はない 行かせて、行かせて
壁沿いの隅へ、ママ、パパ、ごめんなさい

おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要
おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要

私はおかしくなった!私には彼女が必要!

1、2、5の先
ママ、パパ、ごめんなさい
私はおかしくなった
1、2、5の先
ママ、パパ、ごめんなさい
私はおかしくなった!

おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要
おかしくなった、おかしくなった!
私には彼女が必要、私には彼女が必要

おかしくなった、おかしくなった
おかしくなった、おかしくなった


"Я сошла с ума"

Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она
Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она

Я сошла с ума!

Меня полностью нет, абсолютно всерьез
Ситуация "HELP", ситуация "S.O.S."
Я себя не пойму, ты откуда взялась?
Почему, почему, на тебя повелась?

Выключается свет, я куда-то лечу
Без тебя меня нет, ничего не хочу
Это медленный яд. Это сводит с ума
А они говорят: "Виновата сама". А они говорят: "Виновата сама"

Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она
Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она

Я сошла с ума! Мне нужна она!

Без тебя я - не я. Без тебя - меня нет
А они говорят, говорят это - бред
Это солнечный яд, золотые лучи
А они говорят: "Надо срочно лечить"

Я хотела забыть, до упора и вниз
Я считала столбы и растерянных птиц
Без тебя - меня нет. Отпусти, отпусти
До угла по стене, мама, папа - прости

Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она
Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она

Я сошла с ума! Мне нужна она!

Раз, два, после пяти
Мама, папа - прости
Я сошла с ума
Раз, два, после пяти
Мама, папа - прости
Я сошла с ума!

Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она
Я сошла с ума, я сошла с ума!
Мне нужна она, мне нужна она

Я сошла с ума, я сошла с ума
Я сошла с ума, я сошла с ума

リェ―ナ・カーチナ


ユーリャ・ボルコワ