露大使館


ロシアの歌と言えば、真っ先にこの曲を思い出す人は多いでしょう。「カチューシャ」。

この機会に、ちょっとだけ細かいことをひとつ。日本では戦後にロシア歌曲の流行があり、その際に普及したロシアの昔の歌をひとまとめにして「ロシア民謡」と呼んでいます。

微妙なのは、厳密には「民謡」というのは、何百年も前から歌い継がれてきた作者不明の歌のこと。いっぽう、多くの日本の人々が「ロシア民謡」と呼んでいる楽曲は、実は近代に書かれた比較的新しいものが多いです。という訳で、その辺りの事情が引っかかる人は、「ロシア民謡」ではなく「ロシア歌謡」という言葉を使っています。

この「カチューシャ」も、1938年に書かれたポピュラーソング。カチューシャという女の子が川辺で出征する恋人を想うという状況設定の、「軍歌」とも言える歌です。その後、独ソ戦において赤軍兵士たちを称える戦時流行歌となり、戦後は世界的に親しまれるようになりました。

下のクリップは、特別軍事作戦開始直後の2021年5月9日戦勝記念日に、世界中のロシア大使館の職員さんや現地の人々が歌唱したもの。「再び私たちはナチズムと戦います」というメッセージが込められていたのでしょう。

ちなみに、ウクライナでは2022年9月に「カチューシャ」は演奏禁止となりました。国が定めた演奏禁止の音楽が存在するというのは、中々にキョーレツですね。



「カチューシャ」(日本で親しまれている歌詞)

りんごの花ほころび 川面に霞たち
君なき里にも 春はしのびよりぬ
君なき里にも 春はしのびよりぬ

岸辺に立ちて歌う カチューシャの歌
春風やさしくふき 夢が湧くみ空よ
春風やさしくふき 夢が湧くみ空よ

カチューシャの歌声 はるかに丘をこえ
今なお君をたずねて やさしその歌声
今なお君をたずねて やさしその歌声

りんごの花ほころび 川面に霞たち
君なき里にも 春はしのびよりぬ
君なき里にも 春はしのびよりぬ


"Катюша"

Расцветали яблони и груши,
Поплыли туманы над рекой.
Выходила на берег Катюша,
На высокий берег на крутой.

Выходила, песню заводила
Про степного сизого орла,
Про того, которого любила,
Про того, чьи письма берегла.

Ой, ты, песня, песенка девичья,
Ты лети за ясным солнцем вслед.
И бойцу на дальнем пограничье
От Катюши передай привет.

Пусть он вспомнит девушку простую,
Пусть услышит, как она поёт,
Пусть он землю бережёт родную,
А любовь Катюша сбережёт.

Расцветали яблони и груши
Поплыли туманы над рекой.
Выходила на берег Катюша,
На высокий берег на крутой.

「カチューシャ」直訳

リンゴや梨の木が咲き、
川の上には霧が漂う
カチューシャがやってきた
急な坂の高い土手の上に

彼女は外に出て歌い始めた
草原のハイイロワシのことを
愛した人のことを
手紙を大事にしている人のことを

ああ、歌よ、少女の歌
晴れた日の太陽に続いて飛べ
遠い国境にいる戦士へ
カチューシャの想いを伝えて

彼に純朴な少女を思い出させて
彼に彼女の歌を聴かせて
彼は祖国の地を守り抜き、
カチューシャは愛を守り抜く

リンゴや梨の木が咲き、
川の上には霧が漂う
カチューシャがやってきた
急な坂の高い土手の上に