
昔のカセットテープをガサガサと漁り「あー、あった!」。日暮愛葉さんがやっていた「Seagul Screaming Kiss her Kiss her」というバンドの1stアルバム。もう30年位前、渋谷のインディーズCDショップでお店がメチャ押ししていたので何の気なしに買ったらスゴかった。カセットテープにダビングして車でよく聴きました。「聴けるかなぁ」とラジカセに入れボタンを押したところ、「おお、これこれ」懐かしい音と時代の空気が流れてきた。
90年代のバンドブームは今にして思えばすごかった。ミスチル、B'z、スピッツ、エレカシ、ユニコーン、X-Japan、LUNA SEA、GLAY・・・挙げたらきりがない。もちろん陽水さんユーミンさんはじめ大御所も大活躍していたし。スゴイ市場規模だったのだろう。
そういったメジャーシーンとは一線を画すインディーズのロックを「オルタナティブ・ロック」と呼びます。「オルタナ」というよくワカラナイ音楽のジャンルがありますが、その単語の意味の通り、メジャー音楽の「代替」という意味。「あの甘ったるいポップでメロディアスな商業音楽にはもう飽きた。もっと違うのはないの?」という人たちが聴く音楽。
というのが元来の意味だったはずなのだけれど、これを書くにあたり最近の事情も少し調べてみたら、「オルタナ」と呼ばれる若いアーティストの曲も、もはやメジャーシーンで流れていても違和感ないくらいに差がない。単純に「大きく売れる前のインディーズの人たちの曲」という意味で今では使われるようになったのかもしれません。
なぜこんな話をするかというと・・・
現在、当サイトを訪れてくださっているのは、真剣に戦争を憂い国際政治を考え、メインメディアの一方的な情報操作に疑問を感じ情報を求めておられる方々でしょう。大変恐縮なのですが、Haraは非情に不謹慎な考え方もする人間であることをお許しください。
ウクライナ紛争に関して言えば・・・
「2014年に何があって、その後ドンバスがどんなで・・・」
と、いくら唱えたって何も変わりはしません。人間はそのようにロジカルに考え動くものではないから。「ロシアが悪いんだ。ウクライナ頑張れ!」で統一された価値観の中に住む人々には、まったく響かない。世の中のエモーシンがそうだからという、感覚的な部分の力が大きい。
従い「マイダン革命がどうの、ネオコンがどうの」といった歴史や政界財界の構造の話などまったく度外視した部分で感性に訴える何かが必要です。その「何か」を、この初老の乞食男が提供できるはずがないのだけれど、どうなったらよいのかと考えてしまいます。
で、「論理的な部分は度外視する」という意味では、音楽に置き換えてみるのが潔い。正義も悪もなく、正しいも間違いもない。ただ心に響くものを人々は求めるのみ。わかりやすい。
ひとつ、例示しますと・・・
2000年に発売された椎名林檎さんのメガヒット曲「罪と罰」。下のプロモーションビデオは、皆さんよくご存じでしょう。真っ二つに切断されたベンツの演出は斬新でした。
その3年後。冒頭のSeagul〜を10年やり解散し、ソロで活動を始めた日暮愛葉さんのプロモーションビデオ(これをご紹介するのが適切かわかりませんが、映像の雰囲気が比較しやすいので)。
「どちらがお好きですか?」
と人々に質問すれば、今ならたぶん、2つに割れるだろうと思います。メインメディアを様々な映像美が彩った飽食の20年を経た上でなら、そうなる。「昔は椎名林檎さんを新鮮に感じたけど、今なら日暮愛葉さんもいいね。こんな人が居たんだね」という人が大勢出て来るはず。最初から「林檎さんのPVオモシロいけど、でも私には愛葉さんのほうが普通にカッコいい」という、世の空気に流されない確立された感性を持っていた人はマイノリティ。
という訳で、ようやく本題です。
皆さんは、まさにその「世の空気に流されない確立された感性」を持つ人々です。これだけメインメディアが「悪いロシアをやっつけろ」一色の中で、待ったを主張できるマイノリティの方々。
しかし、理屈から入ってもダメ。感性から入らないといけない。
どうでしょう? 上の2つのミュージックビデオを見て。椎名林檎さんが音楽シーンを席巻し旋風が吹き荒れているその時に「こっちもカッコいいよ」って、どうにかすれば出来たでしょうか? 強力なメディアも資金もなく。
それが我々に必要とされていることです。グローバリズムに対するオールタナティブとしてのロシアが、どうすれば人々の感性に響くか。
「無理だ。やはり年月を重ねる必要があった」
それが結論ならば、嵐が去るのを待つしかないのでしょう。しかし音楽と違い戦争は、実際に人の命が失われます。数年を経て「やはりミンスク合意順守か早期の停戦が最も傷が小さく済んだ」という反省に至るまで、経済の崩壊と多くの人々の命が失われる日々が続きます。
そんなことを考えました。
最期にご参考まで。Yukiさんの下のトヨタ自動車のCMを覚えていらっしゃいますでしょうか? Yukiさんがジュディマリ解散後にソロ活動を開始するにあたり日暮愛葉さんにラブコールを送り、たっての希望で提供してもらった楽曲。日暮愛葉さんが日本のオルタナティブ・ロックシーンで確かに異彩を放っていたことを示すエピソードです。