昨日アップした動画【アフガン軍 見捨てられた精鋭部隊 北部州での虐殺】について、私なりの視点。

第一感として「CNNが本領発揮できる時だなぁ」という印象を持ちました。戦場レポートは彼らの十八番。このところ視聴者が減って大変だったでしょうから、CNNにとってはありがたいだろう。
と、皮肉っぽくなりましたが、90年代に世界の様々の出来事を伝えてくれて若き日の自分を感化してくれたのも事実。懐かしい気持ちになりました。

報道の方向性ですが、8月17日の【アフガン退役軍人女性 悲痛な思い「米国政府は私たちを殺している」と現地からの声】にもある通り、米国の施設で働いていた人々が数万人(7万とか8万とか言われている)居て、彼らは米国に行きたがっています。現地に残ると生命が危険。中には「グリーンカード(条件付き永住権のある米国移民ビザ)」を持っているという人も居て、こうしてCNN中継に寄って来て見せる人が居る。これ危険ですね。CNNは出しちゃってますが、当ブログは念のため隠します。

グリーンカード


「私たちはアメリカを助けるために働いた。今度はアメリカが助けてください」
と叫んでいる。

これはもう「アフガンから移民を受け入れるべきだ」ということになりますね。
また彼らの多くが通訳やジャーナリストですから、米国に来れば彼らは人権保護と移民受け入れを熱心に推進するだろう。考えてみれば世界中で発生する難民の多くが米国を含む大国の都合で引き起こされた紛争によるもの。

米国としては政策的に大きな選択肢としては2つあって、
1.戦争をやめる。国境を固める。移民受け入れは極力絞る。
2.戦争(ビジネス)は続ける。移民をたくさん受け入れる。
1がトランプさんで、2がグローバリストたち。この数か月ただでさえ南の国境が大変なことになっていましたが、これでもぅ2への怒涛の流れが加速するのではないか。

と、いうことは、グローバリストたちにとりバイデンはよくやってくれているのではないか?
「ほらみろ、こんなことになったじゃないか! 反省しやがれ!」
とか彼らに言っても仕方ないのではないか。彼らにしてみれば、思い通りになっている。
「バイデンもぅグダグダじゃでーかっ!」
いいんですよ、グダグダで。散々叩かれながら、アメリカをグダグダにしてくれたらいい。彼らにすれば。

そんな風に思えてきました。

さて、それとは別に元商社マン的視点から。動画でもちょっと触れましたが、トルクメニスタンという天然ガス王国がありまして、アフガニスタンのファーリヤーブ州というのはまさにトルクメンとの国境に接しています。下地図のマイーマナというのがファーリヤーブ州の州都。

で、反対側の中国との国境はどうなっているかというと。面白いのですが「ワハーン回廊」という細長ぁ〜いアフガンの地を経て新疆ウイグル自治区と接しています。玄奘三蔵が通った経路で、シルクロードの主要経路だそうです。

アフガニスタン周辺



中国の天然ガスの需給状況はどうなっているかといえば、LNGの46%をオーストラリアからの輸入に頼っている。そしてオーストラリアとの関係悪化に伴い、トルクメンとの関係強化を重視ししている。



トルクメンから中国への天然ガスの経路は、現在はウズベキスタン〜カザフスタンを経由するパイプライン。下の国際協力銀行の方のレポートはナイスです。昔の輸銀(日本輸出入銀行)。お世話になりました。

「中央アジアにおける中国の影響力を、ロシアはどう見ているか」(新興国マクロ経済 WATCH)
https://www.jbic.go.jp/ja/information/reference/reference-2019/contents/20190729_seriesMacro.pdf

しかし、トルクメンからの経路を1つだけに頼るのではなく分散したいということは、考えられます。そして上の記事に
「2019年2月に米ワシントンポスト紙は、『中国軍が密かにタジキスタンに基地を設置した』と報じた。場所はタジキスタン国内であるものの、中国、パキスタンおよびアフガニスタンの国境に隣接している地政学的に複雑な地域だ」
とあります。そう、上の地図のワハーン回廊の北側は、ずっとタジキスタンです。

タジクに軍事基地まで置いたとすると、トルクメンからアフガンのファーリヤーブ州周辺の国境を経てアフガン国内を通り、ワハーン回廊を通じて新疆ウイグルに抜けるパイプラインの建設を視野に入れているのかなと思えてきます。

ただ、アフガンと新疆ウイグルとの国境はかなりの高地らしく、現実性はどうなのかなと思ったところ、元フランス外交官の方の「決して夢ではない」という論評がありました。

「イランからアフガンを経て、中国内陸部に直接パイプラインを引くのは決して夢ではない。」
(チェン・ヨ・ズン氏: 元フランス外交官。日本、米国、シンガポール、中国などに駐在。2010年に定年退官。慶応大大学院修了。台湾生まれ。)



ただし前提として、新疆ウイグル自治区の政治的安定は必要でしょうね。反乱分子を抑えて、完全に北京の支配下に置かねばなりません。

結論として、虐殺のあったアフガンンのファーリヤーブ州の辺りは地理的に大きな利権になる可能性があります。元々はアメリカがここを通って南に抜けるパイプラインを作りたかったんですが。90年代、アフガンルートの構想が持ち上がった時に
「バカな!戦争でもやる気かよ」
と思ったものですが、本当にアメリカが戦争をおっぱじめた時には唖然としました。
そのアメリカが弱っている今、影響力を根こそぎ消し去ろうとする連中がいるとすれば、
1.中国の息のかかった連中
2.中国へでもどこへでも、ここを押さえて高く売ろうとしている連中
どちらですかね。

そんなことを思い巡らしました。写真は25年ほど前。最近は酒類販売がかなり厳しく規制されているらしいですが、当時は平気でした。こんな感じで飲んで商売を仕込んでいってます。

トルクメニスタンにて