他陣営の内部的駆け引きは傍観の立場ですが、市長選において犯罪性の疑われる事案については市民は知るべきだと思いますので、記事にします。

市川市長選告示の少し前ですが、自民党の推薦を受けた坂下しげき候補に関する怪文書が市内の相当数の有権者へ郵送・ポスティング・FAXされたとのこと。同氏の印象を著しく損なう内容で、さらに驚くのが、同じ人に同じタイミングで田中甲候補への岩井清郎市川市議の推薦状も郵送されていたと。



もちろん田中さんは知らないでしょうし、岩井市議も推薦状に署名したとしてもこのような形で有権者に届いているとは知らないという立場でしょう。岩井市議は創生市川第1という自民党系会派に所属。自民党支持者へ送られたとするならば、受け取ったほうは「推薦を得ている坂下候補ではなく田中候補へ投票してほしい」というメッセージと理解するのが自然。ですが、判断材料を持ちませんので事件そのものについては何ともコメントできません。ここでは、選挙に関連し候補(予定者)の印象を毀損する文書を配布した場合にはどのような罪に問われるかについて考察してみます。

記憶に新しいのは2016年東京都議選における鳥越俊太郎候補への文春砲(女子学生へのセクハラ記事)。結果からいうと、2017年3月23日に東京地検特捜部は嫌疑不十分で不起訴処分を決定しています。
市川市長選のケースでは、まず誰が書いて出したのかを特定できるかどうか。それすら大変でしょうが、特定できて刑事告訴したとします。法的には、刑法の「名誉棄損罪」および公職選挙法の「虚偽事項の公表罪」。

まず、刑法「名誉棄損」。実は刑事と民事の2種類があるのですが、犯罪性考察の観点から刑事に絞ります。
「第230条1公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」
「第230条の2-3前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」
そして、膨大なケースによる紆余曲折あるようですが、最終的には「真実性を証明できなかった場合でも、確実な資料・根拠に基づいて事実を真実と誤信した場合には故意を欠くため処罰されない」こととなっているようです。
つまり、「信頼する人から聞いたんだ。ほんとうのことだと思った」と言い張られると、検察は起訴することが難しそう。

次に、公職選挙法「虚偽事項の公表罪」。
「第235条2当選を得させない目的をもつて公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者に関し虚偽の事項を公にし、又は事項をゆがめて公にした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。」
まず、法的に判断する場合は一般感覚とは違い、事実なのか虚偽なのかがホントに難しい。だからこそ上記名誉棄損でも誤信の場合は罪に問われないとしている。さらに公職選挙法の場合、「虚偽」の証明を訴える側がしないといけないでしょうね。また「当選を得させない目的」の有無。これも一般感覚と違い、裁判で有罪に追い込むレベルの立証は相当に難しそう。

民間人の場合は事実であるなしに関わらず名誉棄損が成立するのですが、こうして見てくると公務員あるいは公職の候補者の場合は法的手続きによって相手を罰することが非常に困難であることがわかります。
しかし何もしない訳にはゆきませんので、されたときにどう対処するかという防衛戦略も選挙戦においては必要になるのでしょう。

ふと思う。市川に限らず一般論。
法的に裁かれないとすれば、どうなりますかね。「やられたらやり返す」になっていってしまわないか?日本中の選挙で常態化しているのだろうか。

ここでもやはり、投票率アップを訴えたいです。限られた組織票をどう味方につけるかという選挙だと、こうなってしまう。
「投票率アップ」を公約にする候補が居てもいいくらい。そのためにどのような政策を掲げるかなんていう議論もいいかもしれません。世の中を変えるには、まずそれがネックなのですから。