今日の弾き語りは、「冷たい雨が降っている」。
1978年、吉田拓郎さんです(詞:松本隆、曲・歌:吉田拓郎)。

大学時代の思い出の歌。

六畳一間、風呂なしトイレ共同の木造ボロアパートに住んでいた。
ある秋の夜、ドアをノックする音がした。開けると、親友が立っていました。

焦点の定まらない目。ポカンと宙を泳いでいる姿が尋常ではなく、私はすぐさま何があったかを悟ったのでした。
一学年上の好きな女性の先輩に、ついに告白をするとソイツが決意したことを知っていたので。

その「好き」が、ハンパでなかった。熱にうなされたようで、それが解決しないと何をするにもどうにもならないように見えたんですよ。誰の目にも。「決着をつけたらどうだ?」と促したのは、実は私でした。相棒と言っていい、いちばん近い仲だったので、オレの役割かなと思ってしまった。

「いいお友だちと思っている、って」
部屋に招き入れると、ちゃぶ台の前にフラフラと座り込んで、ポツリとそれだけ言って、黙った。

九州から出てきたばかりだった浅はかな自分に苦笑する。「そっかぁ、ダメやったかぁ、よっしゃぁ、飲めや騒げやぁ〜」という九州のノリでいざとなったら迎えてあげようくらいに構えていた。が、それどころではない。心の容積の100%をはるかに超える感情が一気に失われた目の前の彼は、まさに魂の抜け殻でした。

どうしたらいいかわからずに、とにかく酒を出した。安ウィスキーのトリス。それを二人で、たただた、飲んだ。部屋にあったカセットテープを回した。
「冷たい雨が降っている 冷たい雨が降っている」
覚えているのは、この歌が流れていた風景。そして翌朝、頭がガンガンに痛かったこと。




時々、ふと思います。あの時から結局あまり成長しなかったなと。同じようなことを、繰り返しやってしまっている。人が悩んでいるとき一番大切なのは、結論を出すことではなく、寄り添って一緒に痛みを分かち合ってあげること。「こうしたら?」とポンと吐いてしまい「あ、またやっちまった」というのが、いつまでも治らないみたいです。