第3回電王戦第5局、ponanza vs 屋敷伸之九段。
終盤のほんとうに最後のほうまで均衡が保たれ、主将対決にふさわしい見ごたえある対局でした。やはり僅差の終盤はコンピューター側に分がありましたが、大熱戦に拍手を送りたいです。
個人的な感想ですが、ponanzaは5つのソフトの中でもっとも得たいが知れない印象を受けました。
「人間には見えにくいけど、あるいは見えても指しにくいけど、なるほどいい手かもしれない」
というなら、良いものを見たという満足感をもって受け入れやすい。実際4局目まで、そういう場面がいくつかあったと思います。
しかし、「なにこれ?」というような手が起点となって戦局が形成され最終的に有利に導かれるのを見ると、ただ唖然とするばかり。
具体的には例えば下図。後手ponanzaが△1六香と打ったところ。人間の常識ならまず選択肢にはない手。
(渡辺二冠)「この手がいい手だとしたら、相当強いというかキツイですよ」
(矢内女流五段)「ホントに将棋の常識が覆されてしまいそうな一着ですよね」
解説陣の間でも、そんな会話がなされていました。
上図から▲2八角△1八香成▲3九角△2九成香・・・と進み、この成香が実によく仕事をする展開となりました。驚くばかりです。また後手陣の8二の地点を睨んでいた角のラインが消えたことにより、後手玉の脅威が和らいだのも大きかったかもしれません。後の▲9三歩成の威力が相当緩和されました。
今回は、終局後に再び全対局者・・・5つのソフトの開発者と5名の棋士が集まっての会見があり、そして翌日には地上波TBS番組「情熱大陸」でも出場棋士を追った番組放送があり、それぞれ興味深いものでした。
会見の席で、菅井五段が
「コンピューターに対してだけの必勝法というのはもうちょっとがんばれば探せていたのかもしれないが、それにあまり意味を感じなかったのでそれも敗因のひとつ」
と述べたのに、感じるところがありました。
棋士は自分自身の将棋を磨くために対局に向かうのであり、ゲームソフトの攻略マニュアルを作るがごとき作業に膨大なエネルギーと時間を必要とするならば、プロ棋士側にとりこのイベントの意味は何なのかという疑問は出てくるかもしれないですね。
一方、唯一勝利した豊島七段ですが、「情熱大陸」の中でYSSと練習将棋を指しているそのコンピューター画面の戦形が相振り飛車になっていたのに驚かされました。普段は採用する比率が少ない戦形を含めて、好き嫌いにかかわらず少しでもリードできる序盤を探求したのでしょう。
鈴木八段が「相振り飛車は勝ちやすい」ということを言っていたのを思い出します。隠れた研究課題なのかもしれません。
と、いうことは、今後同じような形で電王戦が実現するならば、人間側のタイプは「オールラウンダーであって、ソフトの傾向を把握し、良い流れになりやすい戦形をこだわりなく採用できる人」が適任ということに、一時的にはなるのかもしれません。
「一時的には」というのは、弱点が見つかればソフト側の修正がなされるでしょうから。次第に完成度も高くなってゆくことでしょう。
ただ、イベント・ショーとしては、小田原城という舞台で森下九段の矢倉を一日堪能できて喜んだファンも多いことでしょうし。素晴らしい演出がされた大舞台でそれぞれのプロ棋士の得意戦法を堪能できるという醍醐味は捨てがたいですね。
色々と考えさせられました。
終盤のほんとうに最後のほうまで均衡が保たれ、主将対決にふさわしい見ごたえある対局でした。やはり僅差の終盤はコンピューター側に分がありましたが、大熱戦に拍手を送りたいです。
個人的な感想ですが、ponanzaは5つのソフトの中でもっとも得たいが知れない印象を受けました。
「人間には見えにくいけど、あるいは見えても指しにくいけど、なるほどいい手かもしれない」
というなら、良いものを見たという満足感をもって受け入れやすい。実際4局目まで、そういう場面がいくつかあったと思います。
しかし、「なにこれ?」というような手が起点となって戦局が形成され最終的に有利に導かれるのを見ると、ただ唖然とするばかり。
具体的には例えば下図。後手ponanzaが△1六香と打ったところ。人間の常識ならまず選択肢にはない手。
(渡辺二冠)「この手がいい手だとしたら、相当強いというかキツイですよ」
(矢内女流五段)「ホントに将棋の常識が覆されてしまいそうな一着ですよね」
解説陣の間でも、そんな会話がなされていました。
上図から▲2八角△1八香成▲3九角△2九成香・・・と進み、この成香が実によく仕事をする展開となりました。驚くばかりです。また後手陣の8二の地点を睨んでいた角のラインが消えたことにより、後手玉の脅威が和らいだのも大きかったかもしれません。後の▲9三歩成の威力が相当緩和されました。
今回は、終局後に再び全対局者・・・5つのソフトの開発者と5名の棋士が集まっての会見があり、そして翌日には地上波TBS番組「情熱大陸」でも出場棋士を追った番組放送があり、それぞれ興味深いものでした。
会見の席で、菅井五段が
「コンピューターに対してだけの必勝法というのはもうちょっとがんばれば探せていたのかもしれないが、それにあまり意味を感じなかったのでそれも敗因のひとつ」
と述べたのに、感じるところがありました。
棋士は自分自身の将棋を磨くために対局に向かうのであり、ゲームソフトの攻略マニュアルを作るがごとき作業に膨大なエネルギーと時間を必要とするならば、プロ棋士側にとりこのイベントの意味は何なのかという疑問は出てくるかもしれないですね。
一方、唯一勝利した豊島七段ですが、「情熱大陸」の中でYSSと練習将棋を指しているそのコンピューター画面の戦形が相振り飛車になっていたのに驚かされました。普段は採用する比率が少ない戦形を含めて、好き嫌いにかかわらず少しでもリードできる序盤を探求したのでしょう。
鈴木八段が「相振り飛車は勝ちやすい」ということを言っていたのを思い出します。隠れた研究課題なのかもしれません。
と、いうことは、今後同じような形で電王戦が実現するならば、人間側のタイプは「オールラウンダーであって、ソフトの傾向を把握し、良い流れになりやすい戦形をこだわりなく採用できる人」が適任ということに、一時的にはなるのかもしれません。
「一時的には」というのは、弱点が見つかればソフト側の修正がなされるでしょうから。次第に完成度も高くなってゆくことでしょう。
ただ、イベント・ショーとしては、小田原城という舞台で森下九段の矢倉を一日堪能できて喜んだファンも多いことでしょうし。素晴らしい演出がされた大舞台でそれぞれのプロ棋士の得意戦法を堪能できるという醍醐味は捨てがたいですね。
色々と考えさせられました。