市川市民ミュージカル、本日11時からのBプロ公演を見てまいりました。
途中15分の休憩をはさみ、全体で2時間半ほどのプログラムでした。

初めて見たのですが、市川市民役者さんたちの熱気あふれる姿には迫力がありました。キャストは百名はかるく超える数。未就学児童からシニアの方まで、全ての年齢層、全世代によるミュージカル。これを完成させるエネルギーは、さぞすさまじいものだったでしょう。大人は皆さん仕事の合間をぬっての稽古でしょうし、また、子供たちをまとめるのは大変だったはず。気が遠くなりそうです(笑)。

内容は、60年前の市川市の実話とのこと。
今は孫も居る年齢の主人公のタカシ。物語は、タカシの少年時代の家族の記憶をたどる形で進行します。

舞台は宮久保のあたり。経済発展のために人や物資の大型輸送を可能にする広い舗装道路の建設が、市の計画により進められます。

工事に男女問わず集められた土方作業員たちの歌。ヨイトマケのフレーズを含む市川バージョンの労働歌は、興味深かったです。
また、主人公家族の気丈なお姉さんを紹介するシーンで、若者たちが昭和歌謡のメドレーを歌い踊る華やかな場面は魅力的でした。

さて、開発にはひとつの大きな問題が。道路予定地の宮久保の坂に、「袖掛けの松」という松の木がありました。坂で転んだ者にはたたりがあると言われ、たたりを逃れるためにその松に着物の袖をかける習慣があったというもの。その木を伐り倒すことを、誰もが恐れた。

そこで市川市役所の担当者が頼ったのが、人望のある大工の棟梁の「玄さん」。主人公タカシの父さんです。玄さんは悩みぬいた末、ひとびとの先頭にたち「袖掛けの松」を伐ることを決意。

玄さん役の役者さんの歌は、見事でした。存在感もあり本格的な発声で、素晴らしかったです。

やがて悲劇が。木を伐り倒したときに、下敷きになった女の子が死んでしまったのです。玄さんは後悔し嘆き悲しみ、廃人のようになって、酒を飲んではふらつく浮浪者のようになりました。
しかし玄さんは、息子タカシとの会話の中で、自分には3人の子供たちがいる、子供たちは宝なのだと悟り、元気を取り戻します。

お父さんが人が変わってしまい悩み苦しむタカシと、励まそうとする友人7人集は、名場面でした。みなさん、小学校の高学年でしょうか。きっと、たくさん練習したことでしょう。熱演に、心から拍手を送りたいです。

今、現代のタカシは、息子夫婦の離婚に悲しむ孫娘が不憫で悩んでいます。酒を飲んでは荒れています。かつての事件後の玄さんのように。そして、父親が憐れんだ女の子が、自分の孫娘と重なって見えるのです。
そんなタカシに、記憶の中の父さんが語りかけます。「愛してやれ。子供は宝なんだ」
タカシは、答えを見つけたのでした。

ふるさと市川を、子供たちを愛してゆこう・・・全キャスト大合唱で、ミュージカルは幕を閉じます。
ブラボーでした!

ロビーのチケット販売や物販コーナーの雰囲気も、市民の手作り感に満ちていて、よかったです。スタッフのみなさまお疲れ様でした。


行徳将棋クラブの3人はみな未就学児で、役どころは、亡くなった女の子についているキツネの精霊。上手に踊っているのが見れて、感激しました!
スゴイ体験ですね。きっと一生かけて、この物語が心の中で育ってゆくことでしょう。