ディベーター時代に原発問題を議論した中で、もうひとつ重要な論点になったことがありましたので、ご紹介します。内部被爆について。

浴びる放射線量が「何シーベルト(当時の単位はレムでしたが)なら健康に影響はない」という原発肯定派の主張に対し、否定派が用いた反論は「内部被爆」でした。

自然界には放射線があり、原発事故などなくても我々は日常その中に居る。まして年に一度は健康診断で、レントゲンの高い放射線を浴びる。原発事故が発生し一時的に通常より高い放射線量を受けたとしても、外部から皮膚に当てられる照射だけならば、健康への被害を過剰に心配する必要は確かにない。

しかし問題は、事故発生時に放出されるヨウ素やセシウムといった「放射性物質」。これらが体内に取り込まれ蓄積すると、長期間にわたり体の内部で放射線を発する。つまり、体内が被爆する「内部被爆」の状態になります。

今回の原発事故で、福島ほかあらゆる地点で放射線量のモニタリングがなされていて、「何マイクロシーベルトだから大丈夫ですよ」という説明が国からはなされていますが、実はこれは、間違いとは言いませんが、片手落ち。

放射線量が上がっているということは、間違いなく「放射性物質」が大気中に飛散している訳です。これが健康に与える影響は、「現時点ではわからない」というのが正確なところでしょう。
恐らく今回の事故で将来、福島第一原発周辺住民の癌や白血病の発生率が数十年後にどうなっているかというデータは、世界中の研究者が注目することになるはずです。

類似のケースですと、チェルノブィリは大事故すぎるので置いておいて、同規模の米国のスリーマイル原発事故が挙げられます。
スリーマイル原発事故は1979年に発生しており、私たちがディベートで議論していた1980年代にはまだ、はっきりした統計がなかったと記憶しています。癌の発生率が上がったという文献もあれば、変わらないという資料もあったり。
WEBで調べてみたところ・・・おーっ、ありました。時は流れたんだなぁ。

スリーマイル島原発周辺でのガン増加を示す新たな論文

原発から16キロメートル内で癌や白血病が0.1%前後、増加しているということですかね(表1)。ほんの少しですので、原発事故との因果関係は、断定はできないと個人的には思いますが。

避難されている方々が大変なご苦労をされているときにこのような投稿をして申し訳ございません。また、政府の発表の仕方に注文をつけるものでもありません。国がもし上記のようなことを述べて「各自、ご判断を」なんてやってしまったら、パニックになりますので。

現状では私たち首都圏在住者は、内部被爆を心配するくらいなら、酒を控えるとか適度な運動をするとかのほうが、よほど病気のリスクを減らせると思います。過剰反応する必要は、ないと考えます。
しかし、避難されている福島第一原発から20Km以内の住民の方々がいつ安心して帰れるかというのは、上記スリーマイルのデータを考慮すれば、難しい問題になるのではと心配です。