先ほどアップした動画のテキストを掲載します。

モルドバ デモ


今回の動画では、10月23日のライブで時間が足りずにあまり触れられなかったモルドバで起きていることについてお伝えします。事態は緊迫の度合いを増しています。

ノボロシア日本を含め西側で報道が少ない理由は、多くのヨーロッパ諸国がモルドバと同じ問題を抱えていること(自国の反政府運動が加速する)。しかし一方で、軍事関係者の間ではモルドバが注目を集め始めています。
1つには、オデッサに隣接するこの地域は冬も比較的暖かく、特に黒海沿岸は最も寒い時期でも一日中氷点下という日は少ないため、へルソンと並びこの地域でも軍事活動が活発化するのではないかという予測。
2つ目も、地理的な位置に関連して。モルドバには沿ドニエストル共和国という独立を宣言している親ロシア地域があり、約1500名のロシア軍が駐留しています。軍事衝突が起きれば隣接するオデッサのウクライナ軍が動くかもしれず、ついにオデッサ州が戦闘エリアになる展開が想定されます。

まず、首都キシニョフ(キシナウ)で行われている抗議活動について起きていることを整理します。光熱費や食料の高騰など経済悪化に抗議し、デモ参加者はマイア・サンドゥ大統領辞任と早期の総選挙実施を求めています。モルドバのインフレ率はヨーロッパで最も高く34%。ガス価格は歴史的な高値となっています。

テント撤去10月10日、特殊部隊がステファン・セル・マーレ大通りのキシナウ中心部にあるテント・キャンプを破壊しました。デモを解散させるのに特殊部隊が使用されたのはモルドバ史上初めてのことです。そこから10月16日までの出来事は、10月18日にアップした動画でお伝えしました。

10月23日日曜日、数千人もの抗議者がキシナウの街頭に繰り出し、早期選挙とロシアとの貿易の再開そしてマイア・サンドゥ大統領の辞任を求めました。

警察は、過去1か月間ほぼ毎日集会が行われていたモルドバの国会議事堂と大統領官邸へのデモ参加者のアクセスを封鎖しました。

モルドバ デモモルドバの検察総局の建物の近くに新しいテント キャンプが設置されました。警察は数名を拘留しましたが、デモは許可を得て実施されており、拘束の理由は「大音量の音楽」や「路上で煙草を吸っていたこと」などでした。


サンドゥマイア・サンドゥ大統領はフェアに出かけ、キャンドルと干しリンゴを購入し笑顔でテレビに登場しています。国民と真剣に向き合う様子が見られません。

10月24日、国会議事堂と大統領官邸の近くに、再びテントキャンプが設置されました。抗議者たちは、マイア・サンドゥが辞任するまでそこにとどまると誓っています。もはや寒さや警察の警棒を恐れていません。

このような状況ですが、実は「サンドゥ大統領が 2023年2月までに(米国で中間選挙後に議会が入れ替わるまでに?)沿ドニエストルで戦闘を開始するつもりであるという情報が、ネット上で増えてきています。

10110月23日のHara Blogで、米国のCBSニュースが、ルーマニアに80年ぶりに米国のエリート部隊「第101空挺師団」が配置されたと報じ隣国モルドバでの有事が示唆されていることをお伝えしました。空挺部隊の配置はその後公式には確認されていない点は要注意です。また、モルドバ有事の際に米国が介入できるのかという疑問があります。

ディンク国防相ところが先ごろ、ルーマニアできな臭い出来事がありました。「ウクライナのロシアとの話し合いが、この地域における平和のための唯一の方法である」と10月初旬に発言したディンク国防大臣が辞任に追い込まれたことです。クラウス・イオハニス大統領は彼を叱責、ルーマニア救国議会党はニコラエ・チュカ首相にディンクを解任するよう要請。ディンク国防相は本会議に召喚され、「ロシアのプロパガンダの助長」について説明を求められました。彼は、自ら辞任を選択しました。

ディンク国防相は3月にも「ルーマニアはロシアがモルドバを攻撃しても軍事援助を提供しない。我が国は防衛と安全保障においてモルドバに直接の義務を負っていない」と発言していました。その主張を持つ国防省の大臣が、圧力を受け辞任しました。

では、「モルドバ有事」とは、どのようなケースが想定されるのでしょうか?
出回っている情報として、「モルダフスカヤ火力発電所へのテロ」があります。

モルダフスカヤ火力発電所周辺図現在、モルドバ国内の大半の電力を生産しているモルダフスカヤ火力発電所は、親ロシア地域である自称「沿ド二エストル共和国」の南端に近い位置にあります。実はモルドバ国内だけでなく、ウクライナやルーマニアにも電力を輸出しています。ウクライナのオデッサ地方では、ロシアによる電力インフラ攻撃の後、このモルダフスカヤ火力発電所の重要性が増しています。軍や装備を輸送する鉄道も、モルダフスカヤ火力発電所に依存しています。

ここへ「何者かによるテロ攻撃」が行われた場合、モルドバのサンドゥ大統領が「ロシアの仕業に違いない。国家のエネルギー安全保障の危機である」として、発電所の安全確保を名目に沿ド二エストルの境界を越えて治安維持部隊を派遣する事態が想定されます。すると、駐留しているロシア軍は応戦せざるを得ません。ロシアとモルドバの間で戦闘が始まります。

さらに、「モルダフスカヤ発電所の危機は我が国のエネルギー危機でもある」として、ウクライナとルーマニアが参戦する。両国のバックには米国が居る。そのような構図はあり得ます。

本件、冒頭で述べた通り西側では情報が少ないので、この動画で使用したテキストをHara Blogにも掲載します。ヨーロッパ諸国の縮図がここにあります。じっくり読み返したい方はご利用ください。



参考資料:
https://t.me/rybar/40537
https://t.me/rybar/40539
https://t.me/rybar/40541
https://t.me/rybar/40542
https://t.me/rybar/40547
https://t.me/rybar/40588