ドイツが俄かに、オーストリアに続くのではないかというほどに国民へワクチン接種のプレッシャーをかけており、プロテストも激化しています。警官隊との乱闘の動画もSNSに上がっていますが、偶発的なものか仕込みなのかは不明。(埋め込み動画はいちばん下)

ドイツ衝突


しかしドイツの場合、経緯を見て行くと今年秋からの急速な左傾化(もともとだったけどさらに)は「どうも国民がやっちまった感がある」という印象を持ちます。

ドイツは二院制ですが、実質は優位が置かれている定数736名の連邦議会がメイン(もうひとつは地方の代表からなる定数69名の連邦参議院。州に関連する連邦法案に権限は限定)。

どんな政党があるかというと:

CDU/CSU:
CDU(キリスト教民主同盟・メルケル所属)とCSU(キリスト教社会同盟)の連立。
CDUは中道右派。キリスト教民主主義、自由主義、社会保守主義を綱領とする。
CSUはバイエルン州を地盤とする地域政党。「我々より右はいない」と右派を自称。

SPD:
社会民主党。ルーツは19世紀の社会民主労働党だが、その後急進左派は党を去り(共産党などを構成)、修正社会主義路線を歩む。CDU/CSUに対抗する二大政党の一つ。

同盟90/緑の党:
緑の党は新左翼色の濃いエコロジー政党。
同盟90は、東ドイツの民主化に関わった市民グループにより結成された同盟。
1993年に両社が統合した。

自由民主党:
中道右派・新自由主義と言われるが、微妙。CDU/CSUあるいはSPDの二大政党いずれかと連立内閣を組んで国政に参加し、ドイツ連邦議会のキャスティング・ボートを握る存在。

ドイツのための選択肢:
右派。欧州連合からの脱退を目標とし、ユーロ圏からの離脱とドイツ・マルクの復活を当面の最優先課題に挙げている。

左翼党:
マルクス・レーニン主義に基づく共産主義政党がルーツだが、現在は開かれた社会主義へと変貌。でも、まぁ左。



それで、今年2021年の9月に連邦議会選挙がありまして、改選前の議席(右)と改選後の議席(左)が下の表(ウィキペディアより)。与党CDU/CSUが大きく票を減らし、SPDに第一党を譲る結果となりました。SPDと緑の党と自由民主党の3党が連立を組み、この12月よりSPDのショルツ新政権が発足します。このオラフ・ショルツ氏が職種によりワクチン接種を義務付けるべきだとするワクチン推進派。
ドイツ2021年9月選挙

「どーしてそんなことにしちゃったの?」
と聞きたくなりますが、下の今年4月2日の日経記事によれば、

【支持率の急落の主因は、市民へのワクチン接種の遅れだ。】
【ドイツ国内では、メルケル政権がEUの欧州委員会にワクチン調達を任せた結果、十分な供給が得られない結果を招いたことへの批判の声が広がっている。米製薬大手ファイザーと共にワクチンを開発したビオンテックはドイツの企業だけに、ドイツへの供給が滞る現状への市民の不満は根強い。
感染拡大の抑え込みに向けた州政府への指導力にも疑問符がついている。ドイツ政府は3月3日、感染者が増えれば元に戻すという約束でロックダウン(都市封鎖)の段階的な緩和に踏み切った。ところが、感染の第3波が来ても一部の州がロックダウンの再強化をためらい、それがさらに感染を広げるという事態を招いた。】



という訳で、反ワク義務派の人々からすれば
「なんだ、緩和的な政策をやってたんじゃないか」
と言いたくなるところ。

ドイツのことはよくワカラナイのですが、日本と同じようにマスコミが「ワクチン確保」と「早めの厳しい外出制限措置」に失敗した政権を責め立てたのでしょうかね。国民がのせられてしまったのかもしれません。政権にお灸をすえたつもりが、逆に左傾化に歯止めがかからないタイヘンなことになってしまった。

う〜ん、プロテストの人たち頑張ってほしいですが、これはかなり厳しいですね。「ワクチンは個人の意思だ」「ロックダウンはもう終わりだ」というのは、メルケル政権の支持を落ち込ませた理屈と逆ですから、巻き戻すことがかなり難しいという印象を持ちます。