日本将棋連盟より先日、下リンクの「棋譜利用のガイドライン」が公表されています。現在行われている王座戦に関して。今後、各棋戦ごとに設定が行われるのかもしれません。



これ以前は昨年の下のリンクで商用目的でない私的利用の範囲ならOKととれたのですが、より窮屈になった。対局日から3か月以内は3図10手まで。しかも動画の場合は3か月以降でも申し込みが必要。



調べたところ背景には3月にこのような訴えがあったようです。しかも同じ市内、本八幡の法律事務所の弁護士さんですね。おぉ。



難しい問題ですが、個人的見解を述べます。

日本将棋連盟が設定するガイドラインなるもはたぶん、法的根拠は薄いと思います。お願いベースあるいは「これを越えたら連盟としては迷惑行為と見なしますよ」というラインを設定したということかと。

棋譜が「著作物」であるかどうかは裁判で争われたことがなく判例がない。不明とされていますが、私は著作物にはあたらないと考えます。でないと大会で「その順は〇〇先生の著作物だ」とイキナリ警察に通報され現行犯で逮捕されたとか、あり得る話になってしまう。音楽でワンフレーズでも似ていると著作権の話になる場合がある・・・のと同じになるとは思えない。

棋戦契約当事者(日本将棋連盟、スポンサー、放送・配信・掲載権を持つメディア)の利益が保護されるべきであり、それを損なう行為は認められない・・・という理屈がどうか。

スポーツ観戦におけるスマホ撮影などがどういう扱いになっているかですが、ざっと調べたところ野球やサッサーでは私的利用については禁止行為とされていないのが一般的みたい。まぁ、そんなにガッツリ機材を設置して撮影する人なんていないだろうし、いたところでクオリティはTVや専用の配信に比べ格段に劣るだろうし。将棋は棋譜を再生できてしまうのが難しいところ。それは選手のプレーそのもの。
「撮影禁止」とされているアイドルのイベント会場等ではどうか・・・「法的に罪に問われるというより出入り禁止等の主催者からの制裁になる」と、ある弁護士さんが言っている。

今これが問題になっているのは、将棋系YouTuberさんたちの存在があるようです。棋戦を語る動画で収益を得る行為がどうか。
プロスポーツを語るYouTuberが動画収入を得て問題になったという話は聞かないし、経済系も同様。誰かの商業行為・経済活動について語るのを動画コンテンツとして収益化することが他ジャンルでは当たり前に行われている。ただ将棋の場合は、放映権・撮影権を持つメディアの映像・写真と同格に近い役割を棋譜がしてしまう。そしてその棋譜は、法的に保護される根拠が曖昧。う〜ん。

疑問を感じた人が日本将棋連盟と協議して互いに納得行くラインを設定してゆくしかないというのが、個人的な結論です。

余談ですが、将棋系YouTuberさんたちの立場から見てみます。
「日本将棋連盟はじめ棋戦の契約当事者が自らの利益の保護を主張するならば、我々も同様の主張をさせてください」
という気持ちは、持つかもしれません。
「将棋実況ほか将棋をコンテンツとしYouTube視聴者を獲得する努力をしてきました。ようやく市場が育ってきたところへ、オイシイと見るや知名度のある連盟所属棋士が入ってくるのは困ります」
ということですね。議論沸騰するでしょうが、主張することはできると思います。