テーブルマーク杯こども将棋大会を昨日ご案内して、過去の色々な思い出がよみがえりました。よい思い出もあれば、痛い経験もあります。痛い方で何といっても心に残るのは「切れ負け」に泣いた子たち。3000人規模の子供たちの対局を時間通り運営するのが尋常ではないことはご想像いただけることでしょうが、それを可能にするため「切れ負け」のルールがテーブルマーク杯では採用されています。

午前中の予選を、3連勝した子たちが決勝トーナメントに進みます。そしてそこには、将来プロになるであろう同世代の逸材たちがズラリ勢ぞろいする。彼ら・彼女らと並んで名前が掲載されることは一生の宝物です。大きなトーナメントボードの自分の名前の前で嬉しそうな顔で写真をとる子供さんとご家族の姿が数多く見られます。当然、みなさん何とかしてそこへ行きたい。

予選、3000人の子供たちの全ての対局を1局30分以内に終わらせるという荒業をどうするかというと、15分経過して対局が終わっていないところへはチェスクロックが置かれ、そこから「3分切れ負け」となります。持ち時間3分が先に切れたら、どんなに勝勢でも負けになる。つまり、もはや将棋の内容ではなく、時間をたくさん使った方が負けになる将棋とは別のゲームになります。

昨今の事情として、我々指導員も「へー、それどこで覚えたの?」と驚くくらいに子供たちがネットで様々な戦法の情報を得て知っているという状況があります。プロ棋界とはちがった、書籍に載ってないまた伝統的な教室でも普通は教えてくれないアマチュアやコンピューター発の戦法を、事も無げに小さな子がポヨ〜ンと指してきます。

さて、一例ですが例えば「稲庭(いなにわ)戦法」。コンピューター発の作戦。下写真の後手側の駒組ですが、ご覧いただくと1筋から9筋まで、すべての個所に2つ以上の駒が利いていて、普通の攻めではどこを攻めても追い返されてしまいます。そして、稲庭側は自分から攻めることはしません。自分から歩を上げることは決してしない。△5一飛〜△5二飛(△6一飛)をひたすら繰り返すだけ。相手が何か指したら何も考えずにノータイムで飛車を上がる下がる(寄る戻る)。歩を突っかけてきたら、いったん取ってまた歩を打つだけ。
「えーっ、これどうしたらいいんだよぉ〜。ワカンナイよぉ〜」・・・10分くらい経過した時点でその状況だと、もう負けです。

稲庭戦法1


で、この日のために切磋琢磨してがんばってきた子が悲しみに暮れ、駒組だけ覚えて飛車をクルクル動かしてただけの子が生涯心に残る幸せを手にするみたいな。

う〜ん、行徳将棋クラブの皆さんにお願いしたいのは、自分からはそういうことしないでくださいねというのと、願わくば事前に対策し、そういうのに当たったらしっかり勝ってほしいということ。

紹介した稲庭戦法について、対策を考えてみました。書籍がないんで、考えるしかないんですよ もっと偉い人がいい方法を出していたらそれを採用してほしいのですが、とりあえず子供向けにワカリやすいHara流。

まずは居飛車の子向け。飛車先の歩を2つの筋で交換して、持ち駒に2歩持ってください。

稲庭戦法2


そして、継ぎ歩と垂れ歩の手筋で拠点をつくる。写真は、2筋と3筋の歩を切って2歩手持ちにし、4筋で継ぎ歩・垂れ歩をした例。
次に▲4五銀〜▲3四歩△同歩▲同銀から4三の地点を攻めればイケそうですね。

稲庭戦法3


次に振り飛車の子向け。中飛車がワカリやすいと思います。飛角銀桂を5三の地点に結集して▲5四歩から大決戦。

稲庭流vs中飛車


重要なのは、開始3分以内くらいの段階で「あコレ稲庭だな」というのに気付くこと。相手は将棋ではなく時間のゲームにしようとしているので、こっちもノータイムで2歩持って継ぎ歩に垂れ歩。あるいは中飛車で真ん中に集中砲火。

将棋で勝ったり負けたりというのはどちらにしても有意義ですが、将棋でないところで努力が水の泡になるのは回避してほしいと願います。
でも、どうなんでしょうね。「情報戦だって立派な戦いだ」と言われたら、それも現実かもしれない。悩みます。