ウクライナのキエフに日本で最初に駐在所を設置したのが、最初に就職した会社でした。1992年のこと。駐在員で送られることになった先輩は、ご家族も本当に心配し本人も人柱になった人のような顔をしていた。キエフはチェルノブイリから南に約100劼半しのところにあります。原発事故から6年が経過していましたが、それが一般的な日本人の感覚でした。

私もその後何度か出張で訪れたのですが、現地では不思議と恐怖は消えていた。人々は普通に暮らしているし、何の違和感もない。しかし後に解るのですが、被災地では小児甲状腺がんが事故後5年目あたりから急増していた。

たぶん現在、日本でその逆パターンになっています。福島原発の事故は海外の人々のほうが記憶に鮮明で、日本人の感覚の中では風化しつつある。

福島第一原発


「復興」という言葉も、人々を惑わせている。
安全だと結論づけること。避難者をはやく帰還させること。経済を元に戻すこと・・・それが復興なのか?
土壌や作物の安全性に関する疑義は「風評被害」という言葉により抹殺される。

連休中に、福島の子供たちの小児甲状腺がんに関する資料を一生懸命見ていたのですが、私の悪い頭では整理できなかった。判定の種類や実際に手術までいった数などどれをとったらよいのかよく解らないのですが、少なくとも200件を超える小児甲状腺がんが発生している。
「明らかに多発じゃないか」
という人もあれば、
「いや、スクリーニング効果だ」
という人もいる。つまり、甲状腺がんというのは放っておくと一生死因には至らずわからないこともあるもので、それが全員検査であぶりだされてきただけと。
スクリーニング効果であるかどうかを確認するためには、少なくとも幾つかの都道府県に手伝ってもらい同様に30数万人の子供たちを何年間か検査してゆく必要がありそうですが(サンプルが少ないと数字がどちらかに強く出てしまう)、そこまでは無理そう。
従って、200人以上の子供たちが小児甲状腺がんになっているという事実と「スクリーニング効果」という考え方を知った上で、各自が判断するしかない。

100%の安全性に関する科学的証明というのは、あり得ないという前提。2011年の3月11日以前に状態を戻すことはできない。そこへ向かうことが「復興」ではない。事故後の別の世界でどう生きるかを各自が判断して選べる社会をつくることが本来の「復興」。
ですから「不安をあおる」なんて言ってちゃダメ。どういう項目が検査されているのかいないのか、基準値とは何で捉え方にも諸説ある等々、小さい頃から学校で教えないといけなくなった。本来は。その上で、安全のラインを市やみなさんのお父さんお母さんが考えて食べていいものを判断していますと小学一年生の初っ端から教える。そうあるべき。

札幌に「チームOK」さんという原発避難者が中心となった団体があります。給食について「放射能理由での給食・牛乳拒否書類」というのが出来ているとHPにありましたので、実はメールで市川の状況をお伝えし「制度が市で確立されていると理解したのですが、放射能を理由に避ける子もあれば食べる子もあり、判断は各自に任されているという状況がどのようにして形成されていったか」知りたいと質問させていただいたところ、返信だけでなくお電話までいただき、とてもご丁寧に教えてくださいました。

まず「放射能理由での」についてですが、市全体としては整備されておらず(ある学校ではそうなのかも)アレルギーに関する書類があり「アレルギーほかの理由による・・・」ということで、拡大解釈して認めてもらえるようになっているとのこと。
これは2011年〜12年頃、日本中で意識が高かった時期に給食の食材を問題視して一生懸命活動した保護者たちが居た結果として、そのようになったとのことでした。
(関東・東北が産地の食材はとらないとのことで、お気を悪くされる方がいたらすみませんとお気遣いいただきました)

次に、放射能に関する教育。残念ながら、学校でそこまではしてくれていないとのこと。
市川のお母さんたちは、
・人と違うことをさせることで仲間外れにされる心配
・ご飯を持たせて風評被害を助長することの心配(白米アレルギーということにして五穀米を持たせたりしている)
などストレスを抱えて過ごしているが、この辺りはどうですか?と質問したところ、以下の答えが返ってきました。
「2011年の3.11以降、自分の身を自分で守らなくてはならない時代になっていると子供に教えています。その結果人と違う行動をとっても、それで仲間外れにするような子が居るような場には居なくていいと」
つまり、何があろうと信念を持って食を選ぶ子に育てるということですね。ハードボイルドなママさんです。
放射能が理由で給食のご飯を食べない子が居るというのは浸透しているのでしょうか?との問いには「自分は子供に嘘をつかせていないので周りの子はそれとなく知っていると思う」
とのこと。
ただ、一緒に活動していたすべての保護者がそうだった訳ではなく、やはり市川のお母さんたち同様「アレルギーということにして」という方々もいらっしゃったとのことでした。

最後に、学校に提出する書類が本件に関連ある場合は必ず書いていらっしゃるとのことです。個人情報なので詳細は控えますが、給食のアレルギー調査や家庭調査、部活の申し込みなどの書類に、
・ 原発事故による放射能汚染に気をつけ、汚染の可能性があるものを避けていること
・ 給食の食材の産地を教えてほしいこと(及び協力への感謝)
・ 修学旅行や部活の遠征地に関すること
などを丁寧な文章で綴られています。
ご経験を伝授いただきまして、本当にありがたいことです。深く感謝申し上げます。

長文になり、失礼いたしました。後半部の札幌のグループの方のお話が、市川の現役小中学生親子の皆様の参考になりましたら幸いです。