もちろん失われた命は戻らないことが最も深刻な点です。法的云々よりもとにかく安全であることが第一なのですが、それを前置きした上で高槻市小学生の死亡事故が投げかける問題を損害賠償の視点から書きます。

大阪府警が業務上過失致死の疑いで調査しているとのこと。過失(事故を予見できたのに怠った不注意)が認められたら、市は国家賠償法で被害者に対し賠償義務を負うことになるでしょう。
「国家賠償法 第1条
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

ただ、過失の証明ってすごく難しい。「市は定期的に専門機関に依頼して安全確認の調査を行っており、問題あるとの報告は受けていなかった」となると、市に過失があるかどうかがまず第一の問題。過失がなければ「ブロック塀が違法建築物であったことはまことに申し訳なく深くお詫び申し上げますが、賠償責任はございません」となってしまう。

国家賠償法ではなく民法ではどうか。被害者のご家族がアクションを起こすかどうかにりますが。
「民法 第717条
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」
従い、例えばブロック塀の一部がゴロッと落ちて人をケガさせたら、その家の住人か持ち主が賠償責任を負います。
しかしながら、強い地震の場合は占有者・所有者の賠償責任を免除する判例があります(1978年宮城県沖地震のブロック塀倒壊死亡事故に関して)。仙台市近郊の過去の最大級の地震に耐えられる構造であったかを基準としていて、地域にもよりそうです。高槻市における今回の揺れが、どうなのか。
さらに、まさにこの宮城県沖の地震以降、土地工作物の基準や強度についての法整備が進んだこともあり、それを踏まえた上でどう判断されるか。違法建築物であることをもって「瑕疵あり」なのかどうか。

さらに今回のケースは学校と生徒ですので、安全配慮義務違反の視点も加わるかもしれません。通学路の安全の確保と塀も含めた学校の構築物の耐震性の確認。不十分であったと認められたら、これは民法415条ですね。債務不履行責任で学校・市が被害者ご遺族に賠償責任を負うことになります。

今後の経過が注目されます。

今日の駅前将棋は4名。さらにおひとり分募金いただき合計5口、2500円でした。累積2万円を超え、目標額の1割突破です。

妙典駅前