昨日の記事で書きましたNHKスペシャル、とても意味のあることを世に問うていますが、残念ながら別のことで話題になっている。

つまり、番組の完成試写会の席でコンピューターとの対決の可能性について質問された羽生名人が「近々何らかのアナウンスがあるでしょう」と答えたものだから、「ついに羽生善治がコンピューターと対決か」と色めき立つ空気ができつつある。

対局するかもしれない、と想像はします。ただその場合、目的がどのようなものであるかは重要だと思う。

ひとつは、人工知能をパートナーとして人間の能力開発に役立てる、そういう関係を築いてゆけば彼らは天使になるでしょうという提案を絵にして羽生先生が示そうとしているのではないか? 番組の延長線上に、そんな続きがありそうな気がします。

もうひとつ、羽生先生は取材を通じ様々な情報を得る中で、人工知能が悪魔になる危険性を本当に憂うに至ったのではないか?番組を見ていて、そんな羽生先生の雰囲気を感じました。まさに現在が歴史の大転換点であり、人工知能と人間の関係をどうしてゆくか、一部の人間だけでなく、広く情報を共有して社会全体として考えるべきとき。
「そのきっかけを世の中に与えるためのイベントとして、自分が役に立つなら」と、棋士として以上にひとりの人間として、羽生先生が考えたとしてもおかしくはないと思います。

メディアはとにかく話題性を煽ってどっちが勝つかの一大エンターテインメントに仕立てようとするかもしれませんが、それは虚しい。対局が実現する場合には、その意義についてもしっかりと報道されることを切に望みます。


個人的に心配になったことは、人工知能の軍事利用。番組ではそのようなことには一切触れてはいないのですが、悪魔的利用としては最たるものだと思います。具体的にはよくわかりませんが、とんでもない殺戮兵器が生まれてきそうな予感がする。