第1期電王戦、山崎隆之叡王 vs PONANZA の対局をタイムシフト視聴しながらソフトに棋譜を放り込んで解析していました。

PONANZAの完成度、山崎叡王の勝負に対する美学、そして電王戦に関係したあらゆる技術の発達、グルメ(笑)、あらゆる面から楽しめる総合エンターテインメントでした。関係者のご努力を称えたいです。

さて、対局の経過についてなのですが、山崎叡王が対局後インタビューで「無難に収めるか勝負にゆくかというところで勝負を選んだ」とコメントしています。例えば33手目、下図局面のようなところでしょう。

手番は後手の山崎叡王です。行徳将棋クラブの級位者のみなさんも気付くであろう、いい手がありますね。

電王戦33手目


そうです、△2五飛。5五の角取りと2九の桂馬を取りながらの飛車成りをみたキビしい手です。

しかしながら、△2五飛の瞬間に▲3三角成と角を切られる。陣形がまとまっており角の打ち込みに強い先手陣に対し後手陣は薄くなっていて、はっきりした成果がない・・・と、コンピューターは判断するんですね。コンピューター的には、上図ではいったん△4四歩と角道を遮断して無難に収めるようです。
でも、△2五飛のほうが勝負として面白そうですよね。見て応援している人々もワクワクしそう。

山崎叡王も、△2五飛を選択しました。
人間同士の戦いであれば、そこでバッと火花が散って互いの感情のぶつかりあいになります。思わぬ乱れが出たり、何が起こるかわからない終盤戦に突入する。それが面白い。

ところが、繰り返し局面を戻しながらソフト評価値をにらんでみたのですが、これ以降は、後手が最善手を指し続けたとしてもジリジリと差が開いてゆく展開で、後手にいいところがないようです。先手には感情がなく、決して間違えない。後手にキビしい戦いとなってしまいました。

対局後のインタビューで連盟の青野専務理事がこの電王戦の意義について、「人間の持つ大局観や創造力の素晴らしさを知ってもらい将棋を広めてゆきたい」と話されていました。その意味では、本局は山崎叡王の勝負に対する考え方・美学をくっきりと浮かび上がらせた、素晴らしい第一章だったと思います。

それこそ、映画「ターミネーター」と同じ。人間と機械と、どっちが強いか?ではない。淡々と合理的に判断し動き語る機械というものに人間を対峙させることによって、人間というものを浮かび上がらせる。それがテーマですよね。電王戦も思考の優劣を競う時代を経て、そのようなエンターテインメントに昇華されつつあると感じました。

さあこれを踏まえて、サラ・コナーあるいはジョン・コナーの役を演じる山崎叡王。第2局ではどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみです。