今日の弾き語りは、「『いちご白書』をもう一度」。
1975年、バンバン(ばんばひろふみ、今井ひろし)。作詞作曲は荒井由実(ユーミン)。
この歌の中に出てくる「いちご白書」という映画は1970年に公開されたアメリカ映画。1968年にあったコロンビア大学の抗議行動が題材になっています。
(上記AmazonリンクはVHSですのでご注意ください。日本語字幕付きのDVDは発売されていないようです)
公開の1970年前後は、日本でも学生運動で様々のことがありました。この歌はその数年後が舞台です。
映画「いちご白書」ですが、「話には聞いているが、見たことはない」という人が多いと思いますので、あらすじをまとめました。長文になりますが、興味ある方はご参考まで。こんなストーリーです。
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サイモンはボート部に所属する大学生。
ある日アパートに帰ると、ルームメイトのチャーリーと女子学生が裸でベッドの上。女子学生はあっけらかんと服を着ると今日の学校ストライキに行くと言い、政治に疎い二人を馬鹿にする。大学は黒人たちを学校の敷地から追い出した。その場所は予備士官訓練所になるらしい。「ここは我々の大学だ」それを示すために学校を占拠している。
「あなたたちも参加すべきよ」そう言って彼女は去って行った。
チャーリーによれば、「いちご白書」のせいでかなりの学生が集まっている。
「(いちご白書って)何だ?」
「学長が言うには、『君たちの言っていることはイチゴが好きだよ』みたいだとさ」
イチゴとはつまりその色、アカ(共産主義)のことである。
女の子もたくさん居るという下心丸出しのチャーリー。連られてサイモンも学校へ。柵の中に見たリンダに一目ぼれし、ストに参加するのだった。
学内では様々な議論が行われている。
「大学はまさにベトナムの人々を殺すのだ(敷地を訓練所に提供することで)」
「その影響を最も受けるのは黒人なんだ」
「我々とて暴力は好まない。目的はこの学校が置かれた状況を外部に伝えることだ。だが新聞やテレビは体制側にあり、それが難しい」
サイモンとリンダは同じ食料調達班となり、互いに恋心を抱くようになる。リンダは、
「私はウーマンリブ(女性解放運動)よ」
と言う。今つき合っている男性の妻になり家庭に入るという運命から自身を解放すべきか悩み、このストに参加している。
サイモンはこっそりストを抜け出し毎日ボート部の練習に参加している。リンダはそれを責める。
「自分の大学が人殺しなのにボートなんて。ストは現実。ボートはゲームよ。あなたは本気じゃないんだわ」
サイモンは混乱する。必至で勉強して合格し、うれしさに飛び上がる思いで入った大学。学校を壊したくない。でも傍観している自分もイヤだ。
リンダも悩みを抱えている。今の彼と結婚すればブルジョアの暮らしがある。が、自分は独占される。かといってサイモンとの恋を深めれば、
「いつか私を独占したいと思うでしょう?そんなあなたはキライ」
そして、ひとりで答えを出すためにストを離れるのだった。
サイモンはストを続ける。リンダが居ないことでかえって問題の本質に目が向くようになる。仲間によって大学と企業の癒着の情報がもたらされた。黒人を追い出した区域を軍の訓練所に提供するのはその土地を非課税にするため。いずれ訓練所は廃止され電力会社が入ることになっているという。つまり脱税が目的。しかも大学の理事と電力会社の会長は同一人物。
活動にのめり込んでゆくサイモンをボート部の友人がそしり、ケンカになる。顔面に拳を食らった傷を勲章にするため、サイモンは「警官にやられた」とストの仲間たちに嘘を言う。彼は英雄扱い。レーニンに心酔しているらしい女子学生が、ゲバラのポスターが貼りめぐらされた印刷室に彼を誘い身を預けてくる。暴力とセックスの中で、サイモンは覚醒してゆく。
リンダが戻ってきた。素直に喜び受け入れるサイモン。束の間二人は、遊園地や公園で恋人どうしの時間を過ごす。
しかし、ふとしたきっかけでサイモンの感情が爆発する。
「核反対なんて騒いでも誰が聞くもんか。皆が無関心でこの町は腐ってる。腐った町の腐った警官が平和を願う者たちを殴っている。殴るべきなのは戦争屋や殺し屋だ!」
最後の日はやってきた。その夜立ち退かなければ、警官隊と州兵たちが強制的に鎮圧するという。しかし学生たちは居座り続ける。
サイモンは学部長の秘書に詰め寄り、学生たちの正義を説きこう言う。
「警官隊の突入をやめないと大変なことになる。こんな戦い、やらずに済んだんだ。この戦いを始めてしまったのは、そっちなんだ」
学生たちは、最後のチャンスにかけている。テレビ局が集まっている。その前で自らの意見を主張したいと構えている。だが学校の柵の外では冷ややかな会話。「このごろの学生は勉強してないんだね」「ひどくなったもんだね」。
拡声器を持つ学長による最後通告が行われ、防護マスクをつけた警官隊と州兵が突入した。催涙ガスをまき散らす。白煙にのた打ち回る学生たち。ひとりずつ引きずられては棍棒で打ち付けられ、弱ったところを担がれ移送者に放り込まれる。学生たちにはメッセージを発する余裕もない。喧騒と怒号の中で容赦ない掃討が展開されてゆく。
寄り添うように屈んで座っていたサイモンとリンダにも警官隊の手が伸びた。二人の仲を裂くように、警官たちがそれぞれを拘束する。リンダの頭に棍棒が打ち付けられた。叫び声。逆上したサイモンはものすごい力で警官たちを突き飛ばし、彼女へ向け階段の上からダイブする。しかしその体は、むなしく再び群がる警官たちの手に墜ちたのだった。
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1975年、バンバン(ばんばひろふみ、今井ひろし)。作詞作曲は荒井由実(ユーミン)。
この歌の中に出てくる「いちご白書」という映画は1970年に公開されたアメリカ映画。1968年にあったコロンビア大学の抗議行動が題材になっています。
(上記AmazonリンクはVHSですのでご注意ください。日本語字幕付きのDVDは発売されていないようです)
公開の1970年前後は、日本でも学生運動で様々のことがありました。この歌はその数年後が舞台です。
映画「いちご白書」ですが、「話には聞いているが、見たことはない」という人が多いと思いますので、あらすじをまとめました。長文になりますが、興味ある方はご参考まで。こんなストーリーです。
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サイモンはボート部に所属する大学生。
ある日アパートに帰ると、ルームメイトのチャーリーと女子学生が裸でベッドの上。女子学生はあっけらかんと服を着ると今日の学校ストライキに行くと言い、政治に疎い二人を馬鹿にする。大学は黒人たちを学校の敷地から追い出した。その場所は予備士官訓練所になるらしい。「ここは我々の大学だ」それを示すために学校を占拠している。
「あなたたちも参加すべきよ」そう言って彼女は去って行った。
チャーリーによれば、「いちご白書」のせいでかなりの学生が集まっている。
「(いちご白書って)何だ?」
「学長が言うには、『君たちの言っていることはイチゴが好きだよ』みたいだとさ」
イチゴとはつまりその色、アカ(共産主義)のことである。
女の子もたくさん居るという下心丸出しのチャーリー。連られてサイモンも学校へ。柵の中に見たリンダに一目ぼれし、ストに参加するのだった。
学内では様々な議論が行われている。
「大学はまさにベトナムの人々を殺すのだ(敷地を訓練所に提供することで)」
「その影響を最も受けるのは黒人なんだ」
「我々とて暴力は好まない。目的はこの学校が置かれた状況を外部に伝えることだ。だが新聞やテレビは体制側にあり、それが難しい」
サイモンとリンダは同じ食料調達班となり、互いに恋心を抱くようになる。リンダは、
「私はウーマンリブ(女性解放運動)よ」
と言う。今つき合っている男性の妻になり家庭に入るという運命から自身を解放すべきか悩み、このストに参加している。
サイモンはこっそりストを抜け出し毎日ボート部の練習に参加している。リンダはそれを責める。
「自分の大学が人殺しなのにボートなんて。ストは現実。ボートはゲームよ。あなたは本気じゃないんだわ」
サイモンは混乱する。必至で勉強して合格し、うれしさに飛び上がる思いで入った大学。学校を壊したくない。でも傍観している自分もイヤだ。
リンダも悩みを抱えている。今の彼と結婚すればブルジョアの暮らしがある。が、自分は独占される。かといってサイモンとの恋を深めれば、
「いつか私を独占したいと思うでしょう?そんなあなたはキライ」
そして、ひとりで答えを出すためにストを離れるのだった。
サイモンはストを続ける。リンダが居ないことでかえって問題の本質に目が向くようになる。仲間によって大学と企業の癒着の情報がもたらされた。黒人を追い出した区域を軍の訓練所に提供するのはその土地を非課税にするため。いずれ訓練所は廃止され電力会社が入ることになっているという。つまり脱税が目的。しかも大学の理事と電力会社の会長は同一人物。
活動にのめり込んでゆくサイモンをボート部の友人がそしり、ケンカになる。顔面に拳を食らった傷を勲章にするため、サイモンは「警官にやられた」とストの仲間たちに嘘を言う。彼は英雄扱い。レーニンに心酔しているらしい女子学生が、ゲバラのポスターが貼りめぐらされた印刷室に彼を誘い身を預けてくる。暴力とセックスの中で、サイモンは覚醒してゆく。
リンダが戻ってきた。素直に喜び受け入れるサイモン。束の間二人は、遊園地や公園で恋人どうしの時間を過ごす。
しかし、ふとしたきっかけでサイモンの感情が爆発する。
「核反対なんて騒いでも誰が聞くもんか。皆が無関心でこの町は腐ってる。腐った町の腐った警官が平和を願う者たちを殴っている。殴るべきなのは戦争屋や殺し屋だ!」
最後の日はやってきた。その夜立ち退かなければ、警官隊と州兵たちが強制的に鎮圧するという。しかし学生たちは居座り続ける。
サイモンは学部長の秘書に詰め寄り、学生たちの正義を説きこう言う。
「警官隊の突入をやめないと大変なことになる。こんな戦い、やらずに済んだんだ。この戦いを始めてしまったのは、そっちなんだ」
学生たちは、最後のチャンスにかけている。テレビ局が集まっている。その前で自らの意見を主張したいと構えている。だが学校の柵の外では冷ややかな会話。「このごろの学生は勉強してないんだね」「ひどくなったもんだね」。
拡声器を持つ学長による最後通告が行われ、防護マスクをつけた警官隊と州兵が突入した。催涙ガスをまき散らす。白煙にのた打ち回る学生たち。ひとりずつ引きずられては棍棒で打ち付けられ、弱ったところを担がれ移送者に放り込まれる。学生たちにはメッセージを発する余裕もない。喧騒と怒号の中で容赦ない掃討が展開されてゆく。
寄り添うように屈んで座っていたサイモンとリンダにも警官隊の手が伸びた。二人の仲を裂くように、警官たちがそれぞれを拘束する。リンダの頭に棍棒が打ち付けられた。叫び声。逆上したサイモンはものすごい力で警官たちを突き飛ばし、彼女へ向け階段の上からダイブする。しかしその体は、むなしく再び群がる警官たちの手に墜ちたのだった。
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