奨励会に入るのは人生のすべてを将棋に賭けることで、たいへんなリスクを負う。奨励会試験に受かったとしても、プロになれなければ大切な10代20代の時間がもったいない。よほど図抜けた素質がなければ奨励会など目指すべきでない・・・

そう認識されていたのは、それほど昔ではないでしょう。つい最近までそうでした。
そして退会された元奨励会員は将棋から離れてゆくことが多かったように思います。

ところがこの数年、元奨の方々がアマ将棋界を大いに活性化し、生き生きと活躍されるようになりました。アマ棋界のリーダー的人材を育てる場として奨励会が機能している現実がある。

正直、私自身、昔は奨励会を夢見る子たちを「早めにあきらめさせるのも私の仕事なのかな」と考えていました。今は、チャレンジしたらいいじゃないかと思っています。その過程で得るものは大きいし(壮絶な世界のことを軽々しく言うのは失礼ですが)、どんな結果になっても人生はまだまだそこから・・・元奨の方々の活躍が、そんな勇気をくれます。

変わりゆく時代の潮流の中に、ひとりの大きな存在がありました。元奨の素晴らしい棋士たちとトップアマとの化学反応をプロデュースした。また何より、ご自身の将棋への純粋な想いが人々を惹きつけました。

天野貴元さんのご冥福をお祈りいたします。