公益法人改革が将棋界にもたらした変化は、「普及」に重点が置かれるようになったこと。その後、普及のあり方や子供への教え方について様々の方法論が提唱され、それぞれの試みが現在進行中と見ています。

しかし断言していい。親御さんたちのニーズはもっといたってシンプル。
「どこへ行ったら教えてくれるの?」
「どこか近くに通えるところはないの?」
入門イベントのチラシを見つけて、参加してみた。それは楽しかった。でもその後は?

継続的に子供の将棋の相手をしてくれる人と場をもっと草の根的に全国で増やせないかという工夫は、どの団体からも見えてこない。
事情はよくわかります。それを収益にすることは難しい。企業イベントや委託事業等に重点がいくのは必然。でも・・・「ホントはこれを普及とは呼べない」というハングリーさを、携わっている方々には持ち続けてほしいと願います。

ひとつ、これに力を入れれば理想に近づけるのではないかと期待していた制度がありました。それは、日本将棋連盟の「将棋コーチ」。
簡単な研修で級位者でも取得でき、お金もあまりかからなかったと記憶しています。「日本将棋連盟将棋コーチ」は肩書きとしても地域で紹介しやすいものだったことでしょう。これを取得して誇りをもってがんばっていらっしゃった方は全国的にも多いと思います。

2年ちょっと前でしょうか、「普及指導員補佐」という面白みのない名称に変更されることが決定されてしまった。公認指導員を補佐する役割に名実ともに限定されてしまい、落胆した将棋コーチの方は多いことでしょう。

その理由に、私個人としては正直驚きました。なんだ、つまらんと。
この肩書きを使って営業をする人が居るとか、支部や普及指導員とトラブルになるケースがあるとか。

問題提起した支部や普及指導員の指摘は確かに正しい。本来「将棋コーチ」は普及指導員を補佐する役割で、普及指導員をさしおいて教室運営を進めたり、支部の呼びかけにまったく応じなかったり、単独で有料の将棋教室をやってしまったり、そういう人が出てくることを想定していなかった。

しかし、と、思う。それほど「オレがやったる」的なエネルギーを持った人々が「将棋コーチ」という制度に惹き寄せられていたのであれば、と。

そのバイタリティを削ぐのでなく、生かす方向での制度設計を検討できなかっただろうかというのは、何とも悔やまれてなりません。
止むを得なかったかもしれません。既存の制度と人を守らなければなりませんし、普及指導員は保証人や推薦人などのハードルを設けていますのである程度安心できる人ですが将棋コーチはやや緩いため、コントロールできる人を上に置いてリスク軽減する必要がある。

「普及指導員の補佐」ではなく「県連の管轄下」というのはどうだったでしょう・・・あきらめ悪いですね(笑)。
つまり、県内でどの地域が手薄というのはその土地の人がいちばんよく解っていますので、指導員が居ない地区には級位者でも熱心な人が居れば将棋コーチになってもらって開講してもらうとか。
お金とってやれるならやってもらったらいいじゃないですか。級位者なんだけどとても人徳があって先生として尊敬されるような人がどんどん出てきたら、それこそ草の根普及の可能性広がります。

残念です。