前職で居た商社は、ウクライナに日本で初めて駐在所を置いた会社でした。

モスクワを足場にキエフには何度となく足を運びましたが、ビジネス上の契約遵守の倫理観が薄いことに関しては、対ロシアも苦労しましたが個人的な印象としては、ウクライナのほうが困った。
IMFが「110億ユーロ(約1兆5千億円)を短期間で融資する準備がある」とか言っていますが、マジかと驚いてしまいます。普通には還ってきそうにないんだけど。あーあ、泥沼にハマるなというのが第一感。

もちろん融資にあたっては緊縮財政などの条件を設定するのだろう。我慢を強いられるウクライナ国民は、生活が豊かになることを願ってEU寄りの政権を支持したのに、と愕然とするだろう。「ロシアもEUも結局オレたちを食い物にするだけじゃないか」と、ナショナリズム・・・極右勢力がいっそう力を増し国情は不安定になるだろう。

欧米とロシアは非難の応酬を演じてはいるが、本気で衝突する気はないんじゃないかな。
ロシアからすれば、「ウクライナをEU/NATOに引き寄せようとしたのは欧米。タダってわけにはいかないよ。クリミアくらい、いいでしょ。それからIMF融資でウクライナ国債の償還とガス代金の未納分支払いも頼むよ」。
欧米にとっても、元々クリミアは旧ソ連〜ロシアの軍事拠点でパワーバランスに変化はない。そうクルかと顔をしかめながらも、まずまず、乗れない取引ではない。

表面的にケンカしながら、水面下ではパイの分け方についてかけ引きが進んでゆくだろう。
一方でウクライナ新政権は、「戦時状態にあるロシア」と広大なる国境線を有しているという現実にイキナリ直面している。ロシアと対峙できる軍事力を整備するために急激に軍備拡充を進めることが、国防上、何にも増して急務。
欧米の軍需産業は今、ウクライナに巨大な兵器の市場が出来たことに胸躍っていることだろう。

ウクライナ国内では日本人が、
「クリル(北方四島)ほしさにクリム(クリミア)を認めたらタダじゃおかないぞ」
と脅されているという。
でもそれは、自分たちの選択により発生した事情を我々に押し付けているだけの我侭。だが、言っても仕方ないから、これから数年、EUの協力を得て結局どうかという経験を経て、真の自立を目指すようになるまで包容力を持って接してあげるしかない。と、客観的に思うけど、半年一年で数字を出さなきゃならない現場のビジネスマンの方々はタイヘンですね。傍観者の立場でスイマセン。

西側の報道だけ見ると、ロシアが一方的にならず者。しかし、ロシアがよいとは言わないが、客観的には欧米も同等にはエグい。
本件に関する日本政府の歯切れの悪さを指摘する評論家も居る。しかし、歯切れが悪くて当然。こっちはガマンしてるんだ。欧米露に対し、「オマエらの都合で迷惑かけるな!」と、クレームしたいくらい。

チェルノブィリ。これだけは、注目したい。福島を経験した我々としては、共にこれから長い道のりを歩んでゆかなければならない、同じ痛みを抱えた友人である。政情不安により原発や住民の健康の管理にマイナスの影響が発生する場合には、日本は率先して国際社会に問題提起すべき。

日本の学校の社会の教科書にも書かれている、ウクライナの「肥沃な黒土」。
実際に目の前にすると、ホントにビックリします。感動です。何という見事な黒い土。コッテリとして、見るからに栄養満点。
あ、そうそう。日本のみなさんがロシア料理と思っている、「ボルシチ」。大地の恵みの農作物の贅沢なシチュー。これ、ウクライナ料理ですから。お間違いなきよう(笑)。