夏休み中は色々と将棋のイベントが行われていますので、みなさんプロの先生と駒落ちで指導対局を受ける機会があるかもしれませんね。

「駒落ちはどうやって指せばよいですか?」

と私に聞かれたら、一言、
「何枚落ちでも、いつも平手で使っている戦法で、しっかり玉を囲って駒組みして指してください」
です。
居飛車の人は矢倉、振り飛車の人はしっかり美濃囲いで・・・出来れば高美濃から銀冠までいっちゃいましょう。上手が、「そんなに組まれてはタマラン」と攻めてきたら、どこかゼッタイに無理をしているハズという目でじっくり考えて、イイ手を探しましょう。

もちろん、定跡を勉強している子はそれでもよいです。が、定跡形を指せないことに引け目を感じる必要はありません。「行徳は駒落ち定跡はやらないんです」と、胸をはって言い切ってください。定跡なんてカッコワリィぜくらいの勢いでOKです。

実は行徳将棋クラブでも初期の頃は駒落ちの手合いで定跡も大盤を使って熱心にやっていたのですが、止めました。
学校の勉強や運動や他の習い事や・・・忙しい日々の中で、それでも将棋の大会に出て出来るだけ勝ちたいんだという普通の子たちにとり、平手だけでもタイヘンなのに、駒落ち定跡を暗記する労力がどれだけ有効なのか・・・甚だ疑問と思うに至りました。

マイコミから出版されている「定跡なんかフッとばせ」(湯川博士著)という名著があり、これを読んだときに我が意を得た気持ちがしました。一部、引用させていただきます。
『駒落ち定跡は「手順よりもフォーム重視を!」というのがこの本のテーマである。
そしてそのフォームとは、「駒全部を使った戦い」を基本とする。
それが平手戦にも通用するフォームづくりに役立ち、手順暗記でなく自分の頭で考えた骨太の将棋となる。
(中略)
むろん戦いにはセオリーがあるのだが、それは数々の実戦から出てきたもののエキスでなくてはならない。
ところがどうも駒落ち定跡は上手の創作品という感じがする。これは江戸時代から、教授することで成り立っていた専門家=家元が、金をとって教えるためにつくり出されたものであるようだ。』
以下、全編に渡り、駒落ち定跡に潜むワナと「平手感覚で将棋を覚える」ことの優位性が解説されています。

駒落ち定跡は全国共通のひとつのテキストではありますが、それをせっせと暗記することと将棋が強くなるのは別のことです。
もちろん、駒落ち定跡は手筋の宝庫ですので、それを学びながらエッセンスを吸収していける子もいるでしょう。でも、そういう子は平手の稽古からでもそうできますので、平手のフォームを使っていったほうが効率がいい。最悪は、そのように手筋の感触を血肉にできない子で、単なる手順暗記になっている。

上記の観点から、駒落ちの本をもし一冊手元に置いておくのであれば、高橋道雄九段の「駒落ち新定跡」(創元社)がオススメです。もちろんこれだけで全ての変化をカバーできるはずはないのですが、「フォームをつくる」ためのサンプル集としてとても良い本です。

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この本のはじめ書きが素晴らしいので、引用させていただきます。

『「駒落ちはむずかしい」といった声をよく耳にする。その要因として、たとえば四枚落ち、二枚落ちなど、それぞれに違った定跡があり、それらをおぼえなければいけない、との錯覚に縛られている方が多いような気がする。とくにプロ棋士の指導を受ける際に、定跡を知らないから恥ずかしいと尻ごみしてしまい、せっかくの指導の機会なのに日ごろの力を発揮できないケースも少なくないように思われる。
古来から伝わる定跡はひじょうによくできていて、これを否定するつもりはない。しかしまた、そう指さなければいけないというものでもない。
本書では発想をまったく逆にして、ひとつの戦法をもってさまざまな駒落ちに対応することを試みてみた。居飛車がお好きな方には矢倉、振り飛車党の方には四間飛車、そして駒落ちでは異色の穴熊戦法・・・三間飛車穴熊。これらをおすすめの戦法とした。お好みでチョイスしていただきたい』


夏の将棋イベントに参加されるみなさん、楽しんでくださいね!